つみたてNISAから新NISAへ切り替えるとどうなる?併用する際の注意点
旧NISAでつみたてNISAを利用していた場合、新NISAへの切り替えには特別な手続きは必要ありません。すでにNISA口座を持っている人は、同じ金融機関で新しいNISA口座が開設され、今までの積立設定が引き継がれています。
本記事では、つみたて投資枠を含む新NISAのおもな特徴を説明したうえで、旧NISAと新NISAを上手に活用する方法も解説します。なお、つみたてNISAで積み上げてきた資産は、新NISAとは別枠で管理されています。つみたてNISAのこれからの運用方法も含め、新NISAの運用の方向性もしっかり検討していきましょう。
- つみたてNISAは手続不要で新NISAへ切り替えが済んでいる
- 新NISAに制度が変わってもつみたてNISAで保有している商品はそのまま運用できる
- つみたてNISAで利用していた金融機関は変更できる
目次
OPENつみたてNISAから新NISAへの切り替え手続きは必要?
つみたてNISAから新NISAへの切り替えに手続きは必要ありません。
ただし、NISA口座を運用する金融機関を変更したい場合は、所定の手続きをする必要があります。
すでにNISA口座を持っている場合:手続き不要
旧NISAの一般NISAやつみたてNISAを利用していて、すでにNISA口座を持っている場合は、特別な手続きをする必要はありません。なにもしなくても、同じ金融機関で新NISA口座が自動的に設定されているはずです。
旧NISAで保有している商品は、売却する必要もなく、そのまま非課税で保有できます。
なお、ジュニアNISAを利用していた場合は、18歳になった翌年に新NISA口座が自動開設されるのが一般的です。
1年単位であれば金融機関の変更が可能
運用するNISA口座は、1年単位であれば金融機関を変更できます。
金融機関を変更する場合は、現在利用している金融機関と変更先の金融機関それぞれで手続きが必要です。具体的な手順は「 NISA口座の金融機関を変更する手順」で解説しています。
つみたてNISAの口座を持っていない場合:口座開設が必要
これからNISAを利用したい場合は、NISAを取り扱っている金融機関でNISA口座を開設する必要があります。
NISAを始める具体的な手順や金融機関の選び方は次の記事で解説しています。NISAを始める際の注意点もあわせて解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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つみたてNISAと新NISAの主な違い
2023年までの旧NISAと、2024年から始まった新NISAの主な違いは、次のとおりです。
ここからは、新NISAのおもな特徴を詳しく解説します。
非課税保有期間が無期限になった
非課税保有期間とは、NISA口座の運用で得た配当金や売却益に税金がかからない期間のことです。
新NISAでは、非課税保有期間が無期限になりました。
投資期間が長いほど、複利効果も大きくなる傾向があるため、旧制度よりも超長期的に運用できる新NISAでは、さらに効率よく資産を増やせる可能性があります。
また、新NISAでは期間の制限なく運用できるようになったため、旧制度のように非課税期間終了後の対策を考える必要がなくなった点もメリットといえるでしょう。2023年までのつみたてNISAは、非課税期間が最長20年間のため、20年後に課税口座で運用するか、売却するかを選択しなければなりませんでした。
つみたて投資枠と成長投資枠が併用できるようになった
旧NISAでは、つみたてNISAと一般NISAの併用はできない仕組みでしたが、新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用が可能になりました。
つみたて投資枠と成長投資枠は、選べる投資対象商品や投資方法が異なるため、異なる戦略を立てて投資することも可能です。たとえば、つみたて投資枠では長期・分散・積立でコツコツ資産を積み上げる、成長投資枠ではリスクをとって資産を大きく増やすといったように二刀流で資産形成することも可能です。
年間投資枠が引き上げられた
年間投資枠とは、1年間で金融商品を購入できる限度額のことです。
2023年までのつみたてNISAでは年間非課税投資枠が40万円でしたが、新NISAのつみたて投資枠では120万円に引き上げられました。
つみたてNISAよりも多くの金額を投資できるため、大きく資産を増やせる可能性があります。
さらに新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠の併用も可能です。つみたて投資枠の年間投資枠120万円と、成長投資枠の年間投資枠240万円の合計360万円を1年間で投資できることも、新NISAのメリットのひとつです。
非課税保有限度額が引き上げられた
非課税保有限度額とは、生涯を通してNISA口座で運用できる金額の上限で、この範囲内の投資で得た利益には税金がかかりません。
新NISAでは、非課税保有限度額が1,800万円と設定されました。NISA口座では1,800万円を超える投資はできません。非課税保有限度額1,800万円のうち、成長投資枠で投資できる上限額は1,200万円です。つみたて投資枠と成長投資枠は併用できますが、つみたて投資枠を使わない場合は非課税保有限度額をすべて使いきれません。
つみたてNISAは最大800万円(年間40万円×20年)、一般NISAは最大600万円(年間120万円×5年)だったことに比べると、新NISAでは非課税で運用できる金額が大きく拡充されたことになります。
非課税枠を再利用できるようになった
新NISAでは非課税枠を再利用できるようになり、旧NISAに比べてさらに効率よく資産を増やせる可能性が高くなりました。非課税枠の再利用は、旧NISAにはなかった考え方です。
新NISAの非課税保有限度額は、保有している商品を売却するとその分復活し、翌年以降に再利用できます。たとえば、購入した600万円分の投資信託を数年後に売却した場合、翌年以降に600万円の非課税枠として再利用できます。
なお、非課税枠として復活する金額は購入したときの金額であり、売却した金額ではありません。600万円で購入した投資信託が売却時に650万円になっていたとしても、復活するのは600万円分の非課税枠です。
また、非課税枠が復活しても、年間で投資できる金額は変わりません。
つみたてNISAから新NISAへの切り替えで知っておきたいポイント
つみたてNISAから新NISAへの切り替えの際は、次の点を押さえておきましょう。
- つみたてNISAの保有商品はそのまま運用できる
- つみたてNISAと新NISAは別口座で管理される
- つみたてNISAの積立設定は新NISAでも引き継がれる
つみたてNISAの保有商品はそのまま運用できる
旧NISAで保有している商品は、旧制度の非課税期間が適用されます。そのため、新NISA開始後も非課税期間中はそのまま保有可能です。
つみたてNISAなら20年間、一般NISAなら5年間、非課税で保有できるため、売却などの手続きは必要ありません。
つみたてNISAと新NISAは別口座で管理される
旧NISAと新NISAは、別口座で管理され、それぞれ運用できます。
たとえば、つみたてNISAで200万円運用している場合でも、新NISAの非課税保有限度額が1,600万円となることはなく、1,800万円まで投資できます。
つみたてNISAの積立設定は新NISAでも引き継がれる
つみたてNISAで自動積立設定をしていた場合は、新NISA口座でも同じ設定が引き継がれます。
たとえば、つみたてNISAでAファンドに毎月3万円の積立設定をしていた場合は、2024年1月以降も同額・同銘柄の積立購入が設定されます。
投資商品や投資金額など設定を変更したい場合は、別途金融機関での変更手続が必要です。
監修者コメント
つみたてNISAで運用していた資産を、つみたて投資枠に持ち越すためには、一旦売却して、つみたて投資枠で買い直さなければなりません。
つみたてNISAと新NISAを併用する場合の注意点
つみたてNISAと新NISAを併用する場合は、次の点に注意する必要があります。
- つみたてNISAの口座で新たな買い付けはできない
- つみたてNISAの商品は新NISA口座に移管できない
つみたてNISAの口座で新たな買い付けはできない
つみたてNISAの新規買付は2023年末で終了したため、2024年以降は旧NISA口座で新たに購入できません。
ただし、つみたてNISAで購入した商品は非課税期間中保有できます。非課税で運用を続けることで、効率よく資産を増やせる可能性があります。
つみたてNISAの商品は新NISA口座に移管できない
旧NISA口座で保有している商品は、保有したまま新NISA口座に移管(ロールオーバー)できません。
旧NISAは非課税保有期間が決められているため、非課税保有期間終了後は、課税口座への移管か売却を選ぶ必要があります。たとえ新NISAの非課税保有限度額に余裕があっても、保有している商品をそのまま新NISA口座へ移管することはできないため、注意しましょう。
つみたてNISAと新NISAを上手に活用する方法
次のポイントを押さえて、つみたてNISAと新NISAを上手に活用しましょう。
- つみたてNISAの運用方法を決めておく
- 新NISAでは「つみたて投資枠」を優先的に活用する
つみたてNISAの運用方法を決めておく
つみたてNISAで保有している商品をどのように運用していくかは、あらかじめ決めておくとよいでしょう。
運用方法をあらかじめ検討することによって「資産価値が減ったタイミングで焦って売却して損した」といった状況を防げます。
つみたてNISAの運用方法として考えられる選択肢は次のとおりです。
- 非課税保有期間終了前に売却する
- 非課税保有期間終了後も課税口座で運用する
つみたてNISAの運用方法は、資産状況や目標金額など人によって異なります。非課税保有期間終了前に、利益が出たタイミングで売却してもよいでしょうし、非課税保有期間終了後も、お金が必要になるまで、または目標金額になるまで運用を続けるのもよいでしょう。非課税期間中に運用を続ければ複利効果を得やすくなり、制度の恩恵も最大限に受けられます。
ただし、非課税期間終了後は課税口座での運用になるため、課税口座で運用して得た利益には20.315%の税金がかかることを留意しておく必要があります。
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新NISAでは「つみたて投資枠」を優先的に活用する
特に投資初心者の場合は、つみたて投資枠を優先して運用し、余裕があれば成長投資枠も活用するとよいでしょう。
新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を併用して投資できます。
つみたて投資枠は、時間や資産を分散させて長期間かけて投資・運用するため、投資初心者でもリスクを抑えて資産形成できる手法です。
一方で、成長投資枠は、積立投資も一括投資も利用でき、投資信託だけでなく株式投資やREITなど、つみたて投資枠よりも幅広い商品に投資できます。そのため、つみたて投資よりも資産を大きく増やせる可能性があります。ただし、成長投資枠で投資する商品や投資手法は、資産が大きく減ってしまう可能性もあることを留意しておきましょう。
このように、投資手法や投資商品によってリスクの大きさが異なります。着実に資産を形成していきたいと考える人は、まずはつみたて投資枠を優先的に活用するとよいでしょう。
NISA口座の金融機関を変更する手順
NISA口座を利用する金融機関を変更する流れは、次のとおりです。現在利用している金融機関と新たに利用する金融機関それぞれで手続きする必要があります。
なお、変更手続きの方法は金融機関によって異なり、インターネット上と郵送でできる場合や、金融機関の窓口でできる場合があります。
利用中の金融機関と変更先の金融機関それぞれの変更方法を、WEBサイトなどを確認しておきましょう。
1. 現在利用している金融機関で変更手続きを行う
まず、現在利用している金融機関で変更手続きを行いましょう。
利用中の金融機関から「金融商品取引業者等変更届出書」、または「非課税口座廃止届出書」を受け取り、必要事項を記入します。
記入した「届出書」を利用中の金融機関に提出すると「非課税管理勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」が交付されます。
交付された「非課税管理勘定廃止通知書」や「非課税口座廃止通知書」は、次に利用する金融機関に提出するため、大切に保管しましょう。
2. 新たに利用する金融機関で口座開設の手続きを行う
次に、新たに利用したい金融機関に口座開設の申請をしましょう。
口座開設申請すると、新たに利用したい金融機関から「非課税口座開設届出書」が渡されます。
「非課税口座開設届出書」に必要事項を記入し、利用していた金融機関から受け取った「非課税管理勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」と一緒に提出すると、口座開設の申請は完了です。
税務署の開設審査を経て、金融機関でNISA口座が開設されます。
NISAの金融機関変更はタイミングに注意しよう
金融機関を変更する場合は、変更したい年の前年10月1日から変更したい年の9月30日の間に手続きを行う必要があります。
金融機関の変更手続には、書類手続や確認などに時間がかかるため、余裕を持って準備することが大切です。
また、変更したい年にすでにNISAで購入していると、その年の変更はできなくなります。あらかじめ注意しておきましょう。
つみたてNISAから新NISAへの切り替えに関するよくある質問
Q.新NISA開始後、つみたてNISAの保有商品はどうなりますか?
A.
特別な手続きは必要なく、旧制度の非課税期間中はこれまでどおり運用できます。つみたてNISAと新NISAは別口座で管理されます。
Q.つみたてNISAとは別の金融機関で新NISAを始めることはできますか?
A.
できます。NISA口座を利用する金融機関を変更する場合は、利用中の金融機関とこれから利用したい金融機関のそれぞれで手続きを行う必要があります。
ただし、変更するタイミングに気を付ける必要があります。
詳しくは、「NISA口座の金融機関を変更する手順」で確認してください。
Q.新NISAに移行する際に積立設定はそのまま引き継ぎになりますか?
A.
つみたてNISAで自動積立設定をしていた場合は、新NISA口座でも同じ設定が引き継がれています。
投資商品や投資金額など設定を変更したい場合は、別途金融機関での変更手続が必要です。
Q.一般NISAから新NISAへの移管はできますか?
A.
できません。旧NISAと新NISAは別口座での管理となります。一般NISAの非課税保有期間終了後は、課税口座への移管か売却かを選ぶ必要があります。
Q.新NISAで購入する銘柄を変えることはできますか?
A.
新NISAにおいても、回数の制限なく銘柄を変更できます。毎月の積立金額も、年間投資枠の範囲内で変更可能です。
監修者コメント
つみたてNISAは、新たな買付はできませんが、つみたて投資枠と並行して運用は可能です。併用すればつみたてNISAとつみたて投資枠の非課税枠がどちらも使えるため、切り替えるときは慎重に検討する必要があります。