新NISAはロールオーバーできない?理由や旧NISAの運用方法を解説
2023年までのNISAは非課税保有期間終了後に、翌年分の非課税投資枠に移管して非課税保有期間を延長させることができました。このように非課税保有期間が終了したときに、保有している資産を翌年の非課税投資枠へ移管することを「ロールオーバー」といいます。
この記事では、非課税保有期間が無期限となった新NISAで、ロールオーバーはどう変化するのかを解説します。
- ロールオーバーのしくみ
- 新NISAでロールオーバーできるかどうか
- 非課税保有期間終了後の旧NISAの保有資産の運用法について
目次
OPENNISAのロールオーバーとは
NISAのロールオーバーとは、非課税保有期間が終了したときに、保有している資産を翌年の非課税投資枠へ移管することを指します。
旧NISAの場合、つみたてNISAは20年間、一般NISAとジュニアNISAは5年間の非課税保有期間が定められていました。この非課税保有期間内でのみ、NISA口座で保有している株式や投資信託の配当金や売却益が非課税で受け取れます。
ただし、非課税保有期間が終了する前にロールオーバーの手続きを行い翌年の非課税枠へ移すことで、非課税保有期間を延長できました。
旧NISA制度ではロールオーバーができたため、非課税保有期間終了後の運用方法は「ロールオーバー」「課税口座への移管」「売却」の3つが選択肢でした。
新NISAはロールオーバーできない?
ここで、2024年1月から開始した新NISAのロールオーバーがどう変化したかを解説します。
- 新NISAにはロールオーバーの概念がない
- 2024年以降は旧NISAのロールオーバーもできない
新NISAにはロールオーバーの概念がない
新NISAと旧NISAの変更点の1つが「非課税保有期間の無期限化」です。ロールオーバーは非課税保有期間を延長する目的で作られた仕組みです。したがって、非課税保有期間が無期限となった新NISAでは、そもそもロールオーバーの概念がありません。
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2024年以降は旧NISAのロールオーバーもできない
2024年1月以降、旧NISAで保有していた資産の非課税保有期間が終了しても、ロールオーバーはできません。旧NISAと新NISAは別制度という扱いのため、旧NISA口座から新NISA口座に資産を移管することはできないのです。
ただし、旧NISA口座で保有する資産の非課税保有期間は引き継がれており、つみたてNISAは20年間、一般NISAとジュニアNISAは5年間、非課税での保有が可能です。2023年に購入した商品は、つみたてNISAは2042年、一般NISAは2027年まで非課税で運用ができます。
なお、2023年までにジュニアNISAで投資した商品は、非課税保有期間終了後も、口座開設者が18歳になるまでは非課税での保有が可能です。
監修者コメント
一般NISAや、つみたてNISAにまだ資産が残っている人は、それぞれの非課税保有期間中は、新NISAと非課税枠を併用できることになります。
旧NISAと新NISAの制度の違い
新NISAは、ロールオーバーがなくなったこと以外にも、旧制度との変更点がいくつかあります。
つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能になった
旧NISAでは、つみたてNISAと一般NISAのどちらか1つを選択する必要があり、併用はできませんでした。しかし、新NISAはつみたてNISAの特徴を継承した「つみたて投資枠」、一般NISAの特徴を継承した「成長投資枠」の併用が可能です。
2つの投資枠を併用することで、積立投資を行いながら、好きなタイミングでまとまった金額の投資もできるようになりました。
年間投資枠が引き上げられた
NISAを利用して、1年間のうちに非課税投資できる限度額を「年間投資枠」といいます。新NISAになり、年間投資枠は次のとおり引き上げられました。
つみたて投資枠と成長投資枠を合わせると、年間最大360万円まで非課税投資ができるようになり、資産形成のスピードが早くなる可能性が高まりました。
非課税保有限度額が設定された
新NISAでは非課税保有限度額も設定されました。非課税保有限度額とは、生涯を通してNISA口座で買付できる金額の上限です。非課税保有限度額内の投資で得た利益には税金がかかりません。
非課税保有限度額は、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて1人あたり1800万円です。なお、成長投資枠を利用して投資できる上限額は1200万円までとなっており、非課税保有限度額の1800万円を使い切るためには、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が必須です。
新NISAは非課税枠の再利用が可能になった
旧NISAで保有している商品は、売却しても非課税枠の再利用はできませんでした。一方、新NISAで保有している資産を売却した場合は、元本分の非課税枠が翌年に復活します。
ただし、非課税保有限度額が復活しても年間投資枠は変わりません。たとえば500万円分の投資信託を売却した場合でも、翌年の年間投資枠は360万円(つみたて投資枠と成長投資枠の総枠)のため、500万円分の非課税投資はできません。
旧NISAと新NISAの口座・非課税枠は別で管理される
旧NISAと新NISAは、あくまで別制度です。そのため、旧NISA口座の利用の有無によって、新NISAの非課税保有限度額が変化することはありません。
旧制度からNISAを利用していた場合、その分だけ生涯で非課税投資できる金額が大きくなります。
旧NISAから新NISAへの変更手続きは不要
旧NISAを利用していた場合、同じ金融機関で自動的に新NISA口座が開設されます。そして、旧NISAで積立設定を行っていた場合は、新NISAでも同じ設定が引き継がれているケースが多く、変更手続きは不要です。
ただし、一般NISAの対象商品の一部は、新NISAの成長投資枠では対象外になっている可能性もあります。新NISAへの移行後は、積立設定を確認し、必要に応じて新たに投資する商品を選び直しましょう。
なお、ジュニアNISAを利用していた場合は、すぐに新NISA口座が開設されるわけではなく、口座開設者本人が18歳になった翌年に自動開設されるのが一般的です。
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新NISAへのロールオーバーはできない!旧NISAの保有資産はどうする?
旧NISAで保有している資産は、新NISAにロールオーバーができません。2024年1月以降に、旧NISA口座で保有している資産の運用方法を3つ紹介します。
非課税保有期間終了までそのまま運用する
旧NISA口座での新規買付は2023年で終了していますが、2024年以降も非課税で運用が可能です。
一般NISAの場合は5年間、つみたてNISAの場合は20年間非課税運用ができ、その期間内で得た利益には税金がかかりません。非課税枠のメリットを活かして資産形成を行うならば、非課税期間終了まで、旧NISA口座で運用を続けるのがおすすめです。
ただし、旧NISA口座の資産は新NISAにロールオーバーできません。非課税保有期間終了時には「売却して現金化する」か、「課税口座で運用する」かを選ぶ必要があると覚えておきましょう。
自身のタイミングで売却して現金化する
旧NISAの資産は、新NISA移行後も非課税で運用できますが、必ずしも非課税保有期間いっぱいまで運用を続ける必要はありません。ライフイベントなどでお金が必要になったタイミングなどで、自由に売却できます。
せっかく運用でお金が増えても、使わなければ意味がありません。しかし、「運用を続ければもっと増えるのではないか」と考えてしまい、なかなか資産を取り崩せない人もいるでしょう。そのような場合は、「利益が〇〇円になったら売却する」「〇年後にマイホームを購入するときの資金に充てる」など、あらかじめ目標を決めておくのがおすすめです。
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非課税保有期間終了後に課税口座で運用を続ける
課税口座で運用を続けるのもひとつの手です。
NISA口座の開設時には、同じ金融機関で、特定口座や一般口座などの課税口座を開設しているはずです。旧NISAの非課税保有期間終了後、NISA口座内の資産は課税口座に移管されます。
また、使っていない新NISAの非課税枠がある場合は、旧NISAの資産を売却して新NISAでの買付資金に充てることも可能です。
ジュニアNISAは18歳まで非課税で運用できる
ジュニアNISAで購入し、非課税保有期間の終了した金融商品は「継続管理勘定」に自動でロールオーバーされ、口座開設者本人が18歳になるまでは非課税で保有できます。
継続管理勘定とは、ジュニアNISA口座で保有する金融商品の非課税保有期間が終了したあとも、口座開設者本人が18歳になるまで金融商品を非課税で保有できる勘定です。
継続管理勘定に移行されたジュニアNISAの資産は、18歳になるまでの好きなタイミングで売却することも可能です。その場合の利益に税金はかかりませんが、一部のみを払い出すことはできません。ジュニアNISA口座で保有するすべての金融商品を払い出したうえで、当該ジュニアNISA口座が廃止されます。
NISAの相談や口座開設はマネプラスへ
NISA口座は1人につき1つまでしか開設できませんが、金融機関は年単位で変更が可能です。窓口のある銀行や証券会社でNISA口座を開設すれば、困ったときに相談しやすいというメリットもあります。
マネプラスの場合、店舗窓口での口座開設手続きができるのはもちろん、スマホアプリ「京銀アプリ」を利用すれば、来店不要で口座の開設から取引まですべてアプリで完結できます。
また、土曜日・日曜日の9:00~17:00には、マネプラスの一部支店でお金に関する相談会も実施しています。口座開設や資産運用に関して不安な点があれば、相談会を利用してみるのもおすすめです。
新NISAのロールオーバーに関するよくあるご質問
Q.旧NISAの保有資産を新NISAにロールオーバーできますか?
A.
旧NISA口座の保有資産は新NISA口座にロールオーバーできません。
旧NISAで保有している資産を新NISAで運用したい場合は、一度売却して新NISA口座で購入し直す必要があります。
Q.新NISAはロールオーバーできないのはなぜですか?
A.
「新NISAでロールオーバーできない」というよりは、「新NISAにロールオーバーの概念がない」といったほうが正しいです。
新NISAは非課税保有期間が無期限となったため、非課税保有期間を延長するというロールオーバーの考え自体が不要になりました。
Q.新NISA開始後、旧NISAの保有資産はどうすればいいですか?
A.
新NISA口座に旧NISAの保有資産は移管できません。旧NISA口座の保有資産の運用方法は次のとおりです。
- 非課税保有期間終了までそのまま運用する
- 自身のタイミングで売却して現金化する
- 非課税保有期間終了後に課税口座で運用を続ける
Q.2024年以降、ジュニアNISAの保有資産はどうすればいいですか?
A.
ジュニアNISAは2023年で廃止されましたが、新NISAは18歳未満の方は利用できません。
その救済措置として、ジュニアNISAで購入し非課税保有期間の終了した金融商品は「継続管理勘定」に自動でロールオーバーされ、2024年以降もジュニアNISAの口座開設者本人が18歳になるまでは非課税で保有できます。
また、18歳になるまでの好きなタイミングで資産を売却することも可能で、その場合の利益に税金はかかりません。しかし、一部のみを払いだすことはできず、ジュニアNISA口座で保有するすべての金融商品を払い出したうえで、当該ジュニアNISA口座が廃止されます。
Q.旧NISAの保有資産を課税口座に移管した場合、課税対象はどうなりますか?
A.
旧NISAの保有資産を課税口座に移管した場合、移管後の売却益や配当金・分配金が課税対象になります。
なお、移管後の保有資産の基準価額となるのは、移管時(非課税保有期間満了時)の時価です。移管時の時価によっては、売却時の基準価額が買付時より下がっていた場合でも、売却時の利益には課税される可能性があります。
監修者コメント
成長投資枠とつみたて投資枠はそれぞれ年間投資枠が設けられています。また、つみたて投資枠は定時・定額投資しかできないため、旧NISA口座の資産を売却して新NISAで運用を継続するときは、計画的に進める必要があります。