つみたて投資枠(旧つみたてNISA)の上限とは?上限額まで使い切る方法やメリット

更新日:2024/04/30
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)の上限とは?上限額まで使い切る方法やメリット

つみたて投資枠(旧つみたてNISA)の年間で投資できる上限額は120万円、生涯で投資できる上限額は成長投資枠と合わせて1,800万円です。さらに、無期限で非課税で運用できます。

つみたて投資枠(旧つみたてNISA)を上限額まで活用することによるメリット・デメリットや、上限額まで使い切る方法を解説します。

なお、つみたて投資枠は、必ずしも上限額まで使い切る必要はありません。着実な資産形成のためにも、自分の資産状況にあわせて長期間で積み立てを続けていくことが大切です。

この記事で分かること
  • 新NISAでは、年間で投資できる上限額と生涯で投資できる上限額が引き上げられた
  • つみたて投資枠を上限額まで利用すると、複利効果を最大限活かせるなどのメリットがある
  • つみたて投資枠は上限額まで使い切ることを目的にするのではなく、無理なく長期的に積み立てを続けることが大切

目次

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2024年からつみたて投資枠(旧つみたてNISA)の上限が引き上げられた

2024年から始まった新NISAでは、年間で投資できる上限額と生涯で投資できる上限額、非課税で運用できる期間が引き上げられました。

旧NISAと新NISAの違い

「年間投資枠」と「非課税保有限度額」を超えない範囲で投資・運用すれば、得られた利益に対して税金がかかりません。

年間投資枠:120万円

年間投資枠(年間非課税枠)とは、1年間で投資できる上限額のことです。

つみたてNISAの年間投資枠は40万円でしたが、新NISAのつみたて投資枠は120万円に引き上げられました。

なお、旧NISAではつみたてNISAと一般NISAは併用できませんでしたが、新NISAではつみたて投資枠(旧つみたてNISA)と成長投資枠(旧一般NISA)が併用できます。そのため、つみたて投資枠の上限120万円に加えて、成長投資枠の上限240万円も利用でき、年間で360万円まで非課税で投資できます。

非課税保有限度額:1,800万円

非課税保有限度額とは、生涯で投資できる上限額のことです。新NISAでは、非課税保有限度額が1,800万円(※)と決められています。

※つみたて投資枠と成長投資枠の総額

そのため、年間投資枠を守っていればいつまでも非課税で投資できるわけではありません。たとえば、つみたて投資枠と成長投資枠を併用して毎年360万円投資した場合は5年、つみたて投資枠だけで毎年120万円投資した場合は15年で、非課税保有限度額を使い切ることになります。

なお、非課税保有限度額1,800万円のうち、成長投資枠で使えるのは1,200万円までです。成長投資枠で1,200万円利用した場合は、つみたて投資枠では600万円までしか利用できません。

非課税保有限度額の内訳

非課税保有期間:無制限

非課税保有期間とは、NISAで得た利益に税金がかからない期間のことです。

つみたてNISA(旧NISA)の非課税保有期間は20年間でしたが、新NISAでは非課税保有期間の定めがなくなり、無期限で非課税で運用できるようになりました。

なお、旧NISAは非課税期間終了後、課税口座に移管(払い出し)されます。そのため、旧NISAを利用している場合は、非課税期間終了前に売却するか、非課税期間終了後に課税口座で運用するかを選ぶ必要があります。

つみたてNISAや一般NISAで保有している商品を、そのまま新NISA口座へ移管することはできないため、注意しましょう。

つみたて投資枠を上限額まで利用するメリット

つみたて投資枠を上限額まで利用すると、次のメリットがあります。

  • 非課税枠のメリットを最大限受けられる
  • 複利効果を最大限活かせる

非課税枠のメリットを最大限受けられる

NISAでは、非課税保有限度額の範囲内の投資であれば、投資で得た利益に税金がかかりません。非課税枠を最大限活用できるように上限額まで投資すれば、非課税メリットを最大限受けられる可能性があります。

たとえば、NISA制度がない場合を考えてみましょう。1,800万円を積立投資して2,600万円まで資産を増やせても、売却益800万円に対して20.315%の税金がかかるため、約640万円しか受け取れません。

一方で、NISA制度を活用すると売却益の800万円が非課税となり、そのまま手元に残ります。このように非課税枠は手元に残る金額を大きく左右するため、無理のない範囲で上限額まで利用するのがおすすめです。

複利効果を最大限活かせる

つみたて投資枠を上限額まで利用し複利効果を最大限に活かせれば、資産を大きく増やせる可能性があります。

複利効果とは、元利(元本+利益)に利益が発生する仕組みのことです。

複利効果を最大限活かせる

投資では、元本が大きいほど利益が大きくなる可能性があり、得た利益が大きいほど複利効果が期待できます。

つみたて投資で投資できる商品は、運用で得た利益が元本に組み込まれて運用されていくものがほとんどです。そのため、つみたて投資枠で上限額に達するまで投資を継続することで、複利効果を最大限活かすことができるでしょう。

つみたて投資枠を上限まで利用するデメリット

つみたて投資枠を上限まで利用する際は、元本割れの損失が大きくなることがデメリットです。

元本割れとは、相場の下落などの影響により、投資商品を購入した金額を下回ることです。

NISAに限らず、どのような投資も元本割れする可能性があり、投資金額が大きいほど値動きが生じたときの損失幅が大きくなる可能性があります。

ただ、つみたて投資枠(旧つみたてNISA)は、他の投資に比べるとリスクを抑えて資産を形成できる方法です。投資信託の基準価額は日々変動しているため、現時点で元本割れしていても、資産価値が回復する可能性もあります。たとえ元本割れした場合も、焦って売却するのではなく、コツコツと長期目線で積み立てることが大切です。

また、相場下落時は複利効果が逆効果となることもデメリットとして認識しておきましょう。

つみたて投資枠の上限を超えるとどうなる?

つみたて投資枠(旧つみたてNISA)は、上限額を超える投資ができません。多くの金融機関では、上限額を超える設定ができないようになっています。

分配金を再投資すると上限を超える可能性がある

基本的には、つみたて投資では上限額ちょうどまで投資することはあっても、上限額を超えることはありません。ただし、分配金が支払われ、再投資される商品の場合は、上限を超える可能性があります。

分配金を再投資する際は、非課税枠を利用します。そのため、年間投資枠や非課税保有限度額の上限ギリギリまで投資している場合に分配金が再投資されると、上限額を超えてしまう可能性があります。

毎年の非課税枠は120万円まで

分配金を再投資する際につみたて投資枠の年間投資枠が足りていない場合は、金融機関や商品によって対応が異なります。成長投資枠、課税口座の優先順位で再投資される場合や、課税口座で再投資される場合もあれば、つみたて投資枠専用商品のため他の枠を利用せずに分配金受け取りとなる場合もあります。

分配金の再投資により上限を超えないようにするには、次の2つから対策するとよいでしょう。

  • 分配金のない投資信託を選ぶ
  • 再投資せずに受け取るように設定する

なお、分配金を支払わずに再投資することで効率よく資産形成できるため、NISAで選べる商品の多くは分配金が出ないものになっています。分配金が支払われる商品を選んで投資している場合は、注意しましょう。

監修者コメント

金子賢司(かねこけんじ)

分配金も定期的にお金が受取れるメリットがありますが、長期的に大きく資産を育てていきたい人は、分配金なしの投資信託のほうがおすすすめです。

つみたて投資枠を上限まで使い切る方法

つみたて投資枠の年間投資枠は120万円、非課税保有限度額は1,800万円です。これらを使い切る方法は、年の始め(1月)に積み立てを始めるか、年の途中で始めるかによって異なります。

1月から投資を始める場合:積立金額は「月10万円」に設定して15年間運用する

1月からつみたて投資をスタートした場合は、毎月の積立金額を10万円にすることで、年間で投資できる上限の120万円まで投資できます。15年間続ければ、非課税保有限度額の1,800万円を使い切ることが可能です。

ただし、毎月の積立設定の上限を10万円としている金融機関もあります。2月以降からスタートした場合、積み立てだけでは上限120万円を使い切ることができない場合があります。

年の途中で始める場合:「ボーナス設定」や「増額設定」を利用する

ボーナス設定とは、ボーナスが入る月にあわせて投資額を増やすことです。増額設定とは、つみたて投資枠で積み立てる金額を増やすことです。

ボーナス設定や増額設定を利用すれば、年の途中から積み立てを始めても上限を使い切れる場合があります。

ただし、ボーナス設定や増額設定が利用できるかどうかは、金融機関や決済方法などで異なります。各金融機関のWEBサイトなどで確認しておきましょう。

つみたて投資枠を上限まで利用すると資産はどのくらい増える?

つみたて投資枠のみで非課税保有限度額の上限まで利用する場合に、資産がどのくらい増やせるかを紹介します。

【シミュレーション条件】
積立金額(月):10万円
想定利回り(年率):5%
運用期間:15年間

上記の条件で運用した場合は、元本1800万円に対し運用利益が約872万円発生し、資産総額は約2672万円になる計算です。

資産運用シミュレーション

※あくまでもシミュレーションの結果であり、実際の運用成果は異なります。

なお、運用結果は利回りによって変わります。非課税保有限度額が上限いっぱいになっても運用を続けることで、さらに資産を増やせる可能性もあります。

つみたて投資枠を上限まで利用したらその後はどうする?

つみたて投資枠を非課税保有限度額1,800万円まで利用しても資金に余裕がある場合は、次の方法でも資産を運用するとよいでしょう。

  • iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する
  • 課税口座で投資する

新NISAでは、つみたて投資枠以外にも成長投資枠があり、2つの枠は併用できます。ただし、つみたて投資枠だけで非課税保有限度額を使い切る場合には、成長投資枠を利用できません。

iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、国民年金や厚生年金などの公的年金に上乗せするための私的年金制度のひとつです。

加入は任意で、加入の申込みや掛金の拠出、運用のすべてを自分で行い、積み立てたお金と運用益を、老後に年金や退職金のような形で受け取れます。

個人が掛け金を積み立てて運用する点や運用益が非課税になる点は、つみたて投資枠(旧つみたてNISA)と同じです。一方で、積み立てた金額がすべて所得控除できるため所得税や住民税の節税ができるのがiDeCoならではの大きなメリットです。

なお、つみたて投資枠(旧つみたてNISA)とiDeCoは併用できます。そのため、NISAを上限額まで利用せずに、iDeCoもあわせて活用するのも選択のひとつです。

NISAとiDeCoのどちらから取り組むべきかは、ライフプランや資産状況によって異なるため、それぞれの特徴を理解したうえで利用しましょう。

課税口座で投資する

NISAの非課税枠(年間投資枠・非課税保有限度額)も、iDeCoの拠出限度額も満額使い切ったうえで、さらに投資する場合は、課税口座を利用することになります。

課税口座で投資する場合は、NISAやiDeCoのような上限がないため、より多くの資金を投資に回せます。また、NISAの投資対象とは異なる個別株式や投資信託などにも幅広く投資できます。

ただし、得た利益に対して20.315%の税金がかかることを理解しておきましょう。

つみたて投資は無理に上限まで利用するより長期的な運用が大切

つみたて投資枠(旧つみたてNISA)は、長期的に運用することでリスクを抑えて資産を形成する投資方法であり、上限まで使い切ること自体は重要ではありません。

上限まで使い切ることを目指すのではなく、無理なく積み立てできる金額をコツコツ継続して運用することを心がけましょう。

選べる2つの開設方法

つみたて投資枠(旧つみたてNISA)の上限に関するよくある質問

Q.つみたて投資枠(旧つみたてNISA)の上限額はいくらですか?

A.

つみたてNISAの特徴を継承している新NISAのつみたて投資枠では、年間投資枠120万円、非課税保有限度額1,800万円(※)と上限が設定されています。

※つみたて投資枠と成長投資枠の総額

詳細は、「 2024年からつみたて投資枠(旧つみたてNISA)の上限が引き上げられた 」をご確認ください。

Q.つみたて投資枠(旧つみたてNISA)の上限額を超えたらどうなりますか?

A.

つみたて投資枠(旧つみたてNISA)は、システム上、上限額を超える投資はできません。ただし、分配金が支払われる商品の場合は、上限を超えてしまう可能性があります。

上限を超えた場合の対応は、金融機関や保有商品によっても異なりますが、成長投資枠や課税口座で再投資される場合や、分配金受け取りとなる場合があります。

詳細は「つみたて投資枠の上限を超えるとどうなる?」をご確認ください。

Q.つみたて投資枠(旧つみたてNISA)は上限額まで利用しないと意味がないのですか?

A.

上限額まで利用すれば複利効果を最大限活かせるなどのメリットはありますが、必ずしも上限額まで利用しなければならないわけではありません。

無理のない範囲で、長期的に積み立てを継続することが大切です。

Q.つみたて投資枠(旧つみたてNISA)の上限額は金融機関によって変わりますか?

A.

新NISAのつみたて投資枠(旧つみたてNISA)の上限額は金融庁が定めたものであり、金融機関によって変わることはありません。

Q.つみたて投資枠(旧つみたてNISA)の上限を超えて投資する方法はありますか?

A.

「iDeCoを活用する」「課税口座で投資する」などの方法があります。
詳細は、「つみたて投資枠を上限まで利用したらその後はどうする?」をご確認ください。

監修者コメント

金子賢司(かねこけんじ)

つみたて投資枠の年間投資枠が120万円に設定されていますが、非課税保有限度額1,800万円(※)があるため、無理に1年間で120万円を使い切る必要はないと考えます。時間をかけて自分の資産を育てることを意識しましょう。
※つみたて投資枠と成長投資枠の総額