つみたて投資枠(旧つみたてNISA)はデメリットしかない?やめたほうがいい人の特徴や注意点
つみたて投資枠とは、NISA(少額投資非課税制度)の投資枠の1つです。つみたて投資枠は長期・積立・分散に適した投資が可能で、2023年までのNISA制度においては「つみたてNISA」と呼ばれていました。
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)をはじめとするすべての投資にはリスクがつきものです。事前にデメリットとその対処法を理解しておくと、投資にともなうさまざまなリスクに備えられます。
本記事では、つみたて投資枠(旧つみたてNISA)のデメリットや、利用が向いていない人の特徴を紹介します。
- つみたて投資枠(旧つみたてNISA)のデメリット
- つみたて投資枠(旧つみたてNISA)が向いていない人
- つみたて投資枠(旧つみたてNISA)を始める際の注意点
目次
OPENつみたて投資枠(旧つみたてNISA)はどんな制度?
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)とは、「NISA(少額投資非課税制度)」の投資枠の1つです。通常は投資で得た利益には20.315%の税金がかかりますが、NISAによる運用によって得られた利益には税金がかかりません。
NISA制度は、日本在住の18歳以上の方であれば原則誰でも利用できます。つみたて投資枠(旧つみたてNISA)で投資できる金融商品は、金融庁が定めた条件を満たした投資信託あるいはETF(上場投資信託)のみです。
2024年から新NISAが開始された
NISA制度は2014年に「一般NISA」が開始され、2018年からは「つみたてNISA」も選択できるようになりました。
2024年からの新しいNISAでは、従来の「一般NISA」は「成長投資枠」、「つみたてNISA」は「つみたて投資枠」へ名称を変え、それぞれの制度の特徴が引き継がれています。制度改正に伴い、年間投資枠や非課税保有期間が拡充され、2つの投資枠が併用可能になるなど、さらに使いやすくなりました。
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)のデメリット
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)は少額からの投資が可能で、投資初心者からも注目を集めている制度です。しかし、始める前に知っておきたいデメリットがいくつかあります。
元本割れのリスクがある
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)で選べるのは、金融庁の定めた基準を満たした金融商品のみです。とはいえ、投資であることに変わりはないため、元本割れのリスクはあります。
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)で投資できる投資信託には、株式や債券などを組み合わせた金融商品もあります。ポートフォリオに組み込まれている企業の業績や地域の経済状況や為替、金利などによって、投資信託の価額は日々変動します。相場によっては資産の評価額が投資金額を下回る「元本割れ」が起こる可能性があることを理解しておく必要があります。
長期運用をすることで、元本割れのリスクを抑える効果が期待できます。短期的な資産評価額の変動に一喜一憂せず、コツコツと積立を続けることが大切です。
投資できる金融商品が限定されている
先述した通り、つみたて投資枠(旧つみたてNISA)では投資できる金融商品の基準が定められています。金融庁の定めた条件を満たさない投資信託や個別株、REIT(不動産投資信託)といった金融商品を購入することはできません。NISA制度を利用して個別株やREITに投資したい場合は、成長投資枠を利用する必要があります。
一括投資ができない
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)は、その名の通り「積立」を前提とした投資法です。年間投資枠120万円の中で毎月10万円を限度として設定した金額を積立投資することで、資産を積み上げていきます。
自分の好きなタイミングで投資したい、あるいはまとまった金額を一括投資したい場合は、成長投資枠の利用を検討しましょう。なお、成長投資枠の年間投資上限額は240万円のため、240万円超の投資をする場合は課税口座を利用する必要があります。
所得控除の対象にならない
NISAと同様に、運用益が非課税になる制度にiDeCo(個人型確定拠出年金)があります。iDeCoは「自分で用意する年金」であり、拠出額は全額所得控除の対象です。
一方、NISAで投資した場合は、所得控除の対象ではありません。所得控除を目的とする場合は、iDeCoや小規模企業共済といった制度の利用を検討しましょう。
損失が出たときに税制上のメリットを受けられない
通常、投資によって生じた損失はほかの利益と相殺し、課税対象となる所得を減らすことができます。このような損失と利益の相殺を「損益通算」と呼びます。しかし、NISA口座の損失は「なかったもの」とみなされるため、ほかの課税口座の利益と損益通算ができません。同様の理由で、控除しきれなかった損失を翌年以降に持ち越す「繰越控除」が適用されない点にも注意が必要です。
監修者コメント
投資のリスクをゼロにすることはできません。しかし長期・積立・分散投資で投資のリスクを抑える効果を期待できます。
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)を利用する際の注意点
ここで、つみたて投資枠(旧つみたてNISA)を利用する際の注意点を確認しておきましょう。
NISA口座は1人1口座しか作れない
運用によって得られた利益が全額非課税になるNISA口座は、1人1つしか持てません。NISA口座の開設時は、税務署で二重口座(すでにNISA口座を開設している状態)ではないか審査されます。もしも 複数のNISA口座の開設手続きを行っていた場合は、2つ目以降のNISA口座の申請は却下され、2つ目以降のNISA口座で購入した金融商品は課税口座に移されます。
なお、NISA口座は1年単位でほかの金融機関に変更することは可能です。
別の口座で購入した商品をNISA口座に移管できない
NISA口座以外の証券口座や投資信託口座で購入した金融商品を、NISA口座に移すことはできません。注文時の設定を間違えて、NISA以外の口座で買付をしてしまった場合、NISA口座で保有するためには一度売却して買い直す必要があります。
金融商品を注文するときは、どの口座での買付をするのか確認することが大切です。
利益が出るたびに売却すると複利効果が得られない
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)を利用した投資は、長期積立が前提です。長期運用をすることで、元本と利益を足した元利に対して利益が発生する「複利効果」を活かすことができるでしょう。
利益が出るたびに売却を繰り返していると、複利の効果が得られにくくなるため注意が必要です。
売却時に手数料がかかる場合がある
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)で購入できる投資信託は販売手数料が0円と決められており、購入時に手数料はかかりません。保有している資産を売却するときも、一般的には手数料がかかりませんが、投資信託のなかには「信託財産留保額」を負担する商品があります。
信託財産留保額とは、投資信託を解約する際に投資家が支払う費用のことです。投資家が新たに手数料を支払うのではなく、「基準価額に対して何%」といったように解約代金から信託財産に残されます。
信託財産留保額については、目論見書(投資信託の説明書)に記載されているので、購入前に確認しておきましょう。
売却して現金化するには数日~1週間かかる
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)の資産はいつでも売却できますが、預貯金のように即時引き出しできるものではありません。売却を申し込んでから現金化されるまでに時間がかかる点にも注意が必要です。
急な出費に対応できるように、ある程度の現金は預貯金などで管理しておくと安心です。
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)のメリット
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)を使った投資はデメリットもありますが、メリットも大きいです。
主なメリットは次の通りです。
- 運用によって得られた利益が全額非課税である
- 1,000円といった少額から投資が始められる
- いつでも回数制限なく売却(引き出し)できる
利益にかかる税金も全額非課税になり、少額から投資に挑戦できるため、投資のハードルが下がったといえます。また、売却に関する制限もなく、必要な時にいつでも引き出せるため、流動性も高いです。
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)がおすすめの人
ここで紹介する特徴に当てはまる人は、資産形成の一法として、つみたて投資枠(旧つみたてNISA)を検討してみてもいいかもしれません。
投資初心者
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)は少額から投資できるため、これまでに投資経験がない人にとっても始めやすい制度といえます。また、投資できる銘柄は金融庁の定めた金融商品のみというのも、投資初心者にとっては安心できるポイントです。
一度積立設定を行った後は自動で同じ商品を買付し続けるため、ご自身で市場の動向を確認して買い付けるといった手間もかかりません。
少額で投資したい
投資と聞くと、何十万円ものまとまった金額が必要であるというようなイメージを持つ人もいるかもしれません。つみたて投資枠(旧つみたてNISA)は、金融機関によって月々100円や1,000円といった少額から投資ができます。
とはいえ、100円などのあまりにも少額の投資では資産の増加を実感しにくい可能性があります。まずは数千円から始めて、資金に余裕ができたり投資に慣れてきたりしたら毎月の積立金額を増やす選択も可能です。
老後に備えて長期的に運用したい
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)は、長期・積立投資を前提とした制度です。ご自身の老後資金やお子様の大学進学費用など、少なくとも十年以上先の目的のために長期的に資産運用したい人に特に向いています。
監修者コメント
新NISAは非課税運用期間が無期限のため、まずはお子様の大学費用、次はご自身の老後資金準備などライフプランに応じてさまざまな用途に利用できます。
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)をやめたほうがいい人
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)は投資初心者にも始めやすい投資ですが、万人に適しているわけではありません。つみたて投資枠(旧つみたてNISA)の利用が向いていない人の特徴には、次のようなものがあります。
余裕資金がない
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)は長期運用することで元本割れのリスクを抑える効果が期待できますが、元本が保証されるわけではありません。日々の生活に必要なお金を投資に回してまうと、お金が必要なタイミングで元本割れしている可能性もあります。
投資は余剰資金で行うものであると理解したうえで、無理のない金額から始めることが大切です。
短期間で大きな成果を出したい
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)は、長期でじっくりと資産を築き上げる投資方法です。一攫千金を狙うギャンブルのような投資法ではないことを理解しましょう。
短期間で大きな利益を狙うのであれば、株式投資やFX(外国為替証拠金取引)といった方法のほうが向いています。ただし、短期間で大きなリターンを狙える投資方法は、大きな損失が生じる可能性があることを忘れてはいけません。市場の動きを読み、商品選びから売買のタイミングまですべて自分で決める必要があり、投資初心者には向いていない方法といえます。
まとまった金額を一括投資をしたい
つみたて投資枠で投資できる金額は年間120万円までで、毎月の投資上限額は10万円です。上限額を超える金額を一括で投資したい場合は、成長投資枠での投資がおすすめです。なお、成長投資枠の投資上限額は年間240万円なので、それを上回る金額を投資したい場合は課税口座での投資を検討しましょう。
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)を利用するポイント
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)を利用する際には、次のポイントに気をつけましょう。
思い立ったタイミングで始める
資産運用に興味があり、手元に余裕資金があるのなら、思い立ったタイミングでつみたて投資枠(旧つみたてNISA)の利用を検討しましょう。
積立投資では、長期運用することで複利効果を活かすことができるでしょう。同じ金額を運用する場合、長い時間をかけたほうが複利効果を期待できます。
たとえば、年利5%で毎月5万円を20年間つみたて投資する場合と、年利5%で毎月10万円を10年間つみたて投資する場合、どちらも元本は1200万円です。しかし、毎月5万円ずつ積み立てる場合の運用成果は約2055万円、毎月10万円ずつ積み立てる場合の運用成果は約1550万円となり、500万円ほどの差が生まれます。
※金融庁「
資産運用シミュレーション
」をもとに計算
「いつか始めよう」と思っている人は、少額からでもいいので実際につみたて投資枠(旧つみたてNISA)を利用し、投資の感覚を早めに身に着けることも大切です。
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)を優先的に活用する
2024年から始まった新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠の2つが併用可能です。成長投資枠は年間の投資上限額も投資できる金融商品の種類も多いですが、投資初心者はまずつみたて投資枠を利用するのがおすすめです。
つみたて投資枠で購入できる金融商品は、金融庁が認めた投資信託とETFのみです。投資信託は1つの商品を買うだけで、さまざまな資産に分散投資ができる商品もあります。また、一度積立設定を行えば、自動で毎月買付が続くのもつみたて投資枠の特徴です。
市場の変動を確認してご自身で購入のタイミングを決める必要がないため、投資初心者はつみたて投資枠を優先して利用するのがおすすめです。
長期的な目線でコツコツ続ける
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)で購入できる金融商品は、長期投資に適している投資信託とETFのみです。言い換えれば、つみたて投資枠の利用で短期間で大きな利益を狙うことは難しいといえます。
市場は常に変化するため、短期的な価格変動に一喜一憂し、資産を売却することは推奨されません。長期目線でコツコツ資産を積み上げるという意識をもつことが大切です。
マネプラスの「京銀アプリ」でつみたて投資枠(旧つみたてNISA)を始めよう
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)のデメリットを理解したうえで資産運用するなら、できるだけ早く始めたほうが複利効果の恩恵を受けられます。
つみたて投資枠の利用には、NISA口座の開設が必要です。マネプラスの「京銀アプリ」なら、マイナンバーカード、または通知カードと運転免許証(運転経歴証明書)があれば来店不要でアプリから口座開設ができます。忙しくて店頭に行けない人も、自宅から簡単に口座開設できるので便利です。
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)のデメリットに関するよくあるご質問
Q.つみたて投資枠(旧つみたてNISA)で損することはありますか?
A.
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)は、投資である以上、資産評価額が投資資金を下回る「元本割れ」のリスクはあります。過去の統計では、5年以内といった短期間での運用では元本割れのリスクが長期運用よりも高頻度で発生しています。
Q.つみたて投資枠(旧つみたてNISA)で複数銘柄に投資するデメリットはありますか?
A.
複数の銘柄に投資することはリスク分散にもつながります。一方で、組み合わせる商品によっては投資対象が重複し、分散効果が薄くなるデメリットもあります。
リスク分散を目的に複数銘柄に投資する場合は、地域や資産クラス(株式や債券など)が異なる商品を選ぶようにしましょう。
Q.50代の両親がつみたて投資枠(旧つみたてNISA)を始めるデメリットはありますか?
A.
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)の投資は、長期運用で資産を増やせる可能性があります。人生100年時代と呼ばれる昨今では、50代からつみたて投資を始めても遅いといったことはありません。しかし、短期間しか運用できない場合は元本割れのリスクが高まることを理解しておきましょう。
Q.つみたて投資枠(旧つみたてNISA)を毎日積み立てるデメリットはありますか?
A.
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)の毎日積立は、下記のデメリットがあります。
・毎日取引をするので明細の量が多くなる
・毎月の購入金額が月ごとに異なるため、年間の非課税投資枠を使い切れない可能性がある
なお、マネプラスでは毎日積立の設定はできません。
Q.つみたて投資枠(旧つみたてNISA)を途中解約した場合のデメリットはなんですか?
A.
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)を途中解約した場合のデメリットは、複利効果の恩恵を享受できないことです。元本と利益を足した「元利」に利益が発生する複利は、長期運用を続けることで効果を発揮します。積立の途中で資産を売却してしまうと、長期間運用を続けていれば得られたはずの複利の恩恵を受けられません。また、一度売却した非課税枠は翌年まで再利用ができない点にも注意が必要です。
監修者コメント
つみたて投資枠(旧つみたてNISA)は長期投資を前提とした制度ですが、長期投資は投資目的が不明確だと挫折してしまいがちです。つみたて投資枠(旧つみたてNISA)を始めるときは「お子様の教育費」「老後資金」など、投資の目的を明確にしておくことをおすすめします。